大口径化の進むシリコンウェハ:生産性の大幅な向上を目指して!

デバイスの微細化の進展にともない、シリコンウェハに対する品質要求も厳しくなっている。シリコンウェハの製造技術は成熟してはきたが、まだ多くの開発課題を残している。近年の品質要求の中心的なものとして、低欠陥化・高平坦度化が挙げられる。

低欠陥化については、結晶育成時に結晶内に生成するCOP(Crystal Originated Particle)の低減化がある。COP は、結晶欠陥の一つで、単結晶の格子点にシリコン原子がない、すなわち「空孔」が集まった微細な欠陥。ゲート酸化膜の耐圧に悪影響を及ぼす。

ウェハ表面に露出したCOPを消滅させる方法として水素(H)雰囲気化での高温アニール、さらに結晶育成段階でCOPを消滅させることを狙った引き上げ方法の開発、およびその両者の組み合わせとして結晶育成時にCOP サイズを小さくし高温アニールで消滅させやすくする、などの手段が開発、実用化されている。

また、エピタキシャル層には原理的にCOPは生成しないので、エピタキシャルウェハも広く採用されるようになってきた。量産でのウェハ種の選択はコストとの兼ね合いで決められることが多い。

高平坦化のためには、両面研磨ウェハが片面研磨に比べて優位である。直径300mm のウェハでは、両面研磨ウェハが標準となっている。200mm 以下の口径では片面研磨が主流であり、これもコストとの見合いで採用が検討されている。その他、平坦度向上のために、ウェハ加工工程でエッチングの改良なども必要になってくる。

ウェハの大口径化は、300mm がすでに実用化されている。それに先んじて日本では直径400mm ウェハの開発が行われた。開発リスク低減のため、1996 年3月に株式会社スーパーシリコン研究所が、基盤技術研究促進センター(当時の通商産業省と郵政省の共管組織)と国内ウェハメーカ7 社(発足当時)との共同出資で設立され、2001 年1月まで開発が行われた。

ここでの主な開発テーマは、大重量の結晶引き上げ・保持機構とその制御、大型石英坩堝(るつぼ)の設計、ナノテクノロジー領域の超平坦加工、表面異物検出、低温エピタキシャル成長などの技術開発であり、大きな成果を挙げた。

300mmウェハの本格採用が、当初の見込みより後ろ倒しになっていくなかで、ITRS(国際技術ロードマップ)は300mm の次の世代のシリコンウェハ口径は450mmとの考えを打ち出した。日本での400mm ウェハ研究開発のかなりの部分は、450mm ウェハにも展開可能と考えられ、日本発の技術として貢献することが期待される。

各種の口径のシリコン単結晶のインゴットとウェハ。直径300mm ウェハは、LP レコードと同じサイズ。「株式会社SUMCO(旧三菱住友シリコン株式会社)提供」
図3。各種の口径のシリコン単結晶のインゴットとウェハ。直径300mm ウェハは、LP レコードと同じサイズ。
「株式会社SUMCO(旧三菱住友シリコン株式会社)提供」

前のページへ | もくじ | 次のページへ

半導体模倣品に対する注意のお願い F-GHG測定・管理ガイドライン DFM(design for manufacturability:製造性考慮設計)用語集 DFM(design for manufacturability:製造性考慮設計)用語集 DFM(design for manufacturability:製造性考慮設計)用語集 新規追加版 よくわかる半導体 半導体の社会貢献 半導体ミニ辞典 半導体の大冒険 BCMへの取り組み