半導体ストレージ:急成長するNANDフラッシュ

NANDフラッシュを使った記憶装置

半導体ストレージは、半導体メモリを使った記憶装置である。 半導体ディスク(SSD:Solid State Drive、図2-2-E1)のほか、 USBメモリやメモリカードなど不揮発性メモリであるNAND型フラッシュメモリを使った記憶装置もある。

図2-2-E1 大容量SSD
図2-2-E1 大容量SSD

NAND型フラッシュメモリは、他の不揮発性メモリに比べて、大容量・低コスト化が容易で、1年に約2倍のペースで大容量化、 10年間で1/50以下の低価格化が進み、メモリカードの急伸に大きく寄与している。

カードの大容量化にともない、扱うデータも静止画からオーディオ、さらには動画、高画質動画へとその用途を広げている。 デジタルカメラ、携帯型音楽プレーヤ(メモリオーディオ)、ビデオカメラなど、いわゆるデジタル家電の記憶媒体として急激に市場を拡大している。

半導体ストレージの構成と特徴

メモリカードは、一般的にコントローラとフラッシュメモリからなる(図2-2-E2)。半導体ディスク(SSD)は、 コントローラ側にパソコン用の汎用インタフェースを備えた構成となる。

図2-2-E2 半導体ストレージの基本回路構成
図2-2-E2 半導体ストレージの基本回路構成

半導体ストレージはハードディスク(HDD)や光ディスクに比べ、可動部品をもたないため軽量で耐振動性、 耐衝撃性に優れ、消費電力・起動時間についても優位である。

一方、ビット当たりのコストや記憶容量、書き込み回数の制約などはHDDが優位である。 しかし、HDDを上回る低コスト化と大容量化で、この弱点を回避する方向で開発が進んでいる。

半導体ストレージの性能は、フラッシュメモリの制御アルゴリズムによって決まるといっても過言ではない。 後述のようにデータの信頼性もフラッシュメモリ制御に依存するところが大きい。 ストレージとしての性能とNANDフラッシュメモリの特性を考慮したコントローラの最適設計が重要となる。

多値セル、多ビット化の方向

1989年に発明されたNANDフラッシュメモリは、セル構造や回路構成、プロセス技術などが進化し続けている。 情報の保持形態も「1セル1ビット」(SLC:Single-Level Cell)から、1セルに2ビット保持する「多値セル」(MLC:Mult-LevelCell)へと移行し、 さらに3ビット/セル以上の多ビット化の技術も開発されている。

ただし、MLC方式のセルの状態はSLC方式に比べると不安定で、メモリアクセス速度の低下を招き、 誤り訂正(ECC)能力の強化が必要とされることが多い。加えて、SLC方式では10万回の書き込みが保証されているところ、 MLC方式では1万回と耐久性が低い。

このようにプロセスの進化、多値化の進展によって、データの信頼性が劣化する傾向にある。

信頼性を確保するためには強力な訂正能力をもつECCや、 特定のメモリセルに繰り返し書き込んで特性を劣化させてしまうのを防ぐウェアレベリング(書き換え回数の平準化)など、 NANDフラッシュメモリ制御の役割はますます重要になってきている。

前のページへ | もくじ | 次のページへ

半導体模倣品に対する注意のお願い F-GHG測定・管理ガイドライン DFM(design for manufacturability:製造性考慮設計)用語集 DFM(design for manufacturability:製造性考慮設計)用語集 DFM(design for manufacturability:製造性考慮設計)用語集 新規追加版 よくわかる半導体 半導体の社会貢献 半導体ミニ辞典 半導体の大冒険 BCMへの取り組み