
近年、世界経済と産業を取り巻く環境は大きく変化しています。地政学的リスクの高まりや経済安全保障政策の強化、サプライチェーンの再編、そしてAIをはじめとする先端技術を巡る国際競争の激化により、半導体はもはや一産業の枠を超え、国家の競争力や社会の持続的な発展を支える戦略的基盤となっています。
特にAIは、新たな産業革命とも言える変化をもたらしています。その影響はデータセンターやクラウドにとどまらず、ロボティクス、自動運転、産業オートメーション、スマートシティなど、現実世界のさまざまな領域へと広がっています。デジタルとリアルが融合する時代において、半導体はその実装を支える中核技術であり、今後の社会や産業の発展を左右する重要な存在です。
また、AIの普及に伴う計算需要の拡大は、より高い性能とエネルギー効率の両立を求めています。半導体には、システム全体の効率向上を通じて、デジタル社会の発展と持続可能な社会の実現を支える重要な役割が期待されています。
日本では近年、半導体産業の再興に向けた産官学の取り組みが大きく進展しています。生産基盤の強化、先端技術の研究開発、人材育成、地域産業クラスターの形成など、多くの分野で具体的な成果が生まれ始めています。
これまでの取り組みは、半導体の供給力強化に重点が置かれてきました。それは経済安全保障の観点からも極めて重要であり、今後も継続して強化していくべき重要な課題です。一方で、日本の半導体産業が持続的な成長を実現し、国際競争力を高めていくためには、それだけでは十分ではありません。
これからは、供給力の強化に加え、半導体を起点として新たな需要を創造し、より大きな価値を生み出していく視点が重要になります。
AI、データセンター、通信インフラ、クラウド、エッジコンピューティング、モビリティ、産業オートメーションなど、半導体が生み出す価値の領域は急速に広がっています。日本が目指すべき姿は、半導体を作るだけでなく、半導体を使って価値を創る国となることです。
半導体産業そのものの競争力向上に加え、半導体を活用した新たなサービスや産業を創出し、社会課題の解決や経済成長につなげていく。そのためには、製造基盤の強化のみならず、人材育成、設計開発力の向上、ソフトウェアやAIとの融合、さらにはイノベーションが継続的に生まれる環境の整備が不可欠です。日本が長年培ってきた技術力とものづくり力を、新たな価値創出へと結び付けていくことが、次世代の競争力の源泉になると考えています。
半導体産業の競争力は、一企業だけで実現できるものではありません。材料、製造装置、設計、製造、ソフトウェア、ユーザー産業、人材、政策など、多様なプレーヤーが連携するエコシステム全体の力が問われています。
半導体部会(JSIA)は、こうした認識のもと、業界共通の課題に取り組み、個社だけでは解決が難しいテーマについて産業界としての方向性を示してまいります。また、政策提言、人材育成、地域振興、国際連携、標準化などの活動を通じて、日本の半導体産業の持続的な発展に貢献してまいります。
さらに、海外の半導体工業会との連携を深めるとともに、世界半導体会議(WSC)や半導体に関する政府当局間会合(GAMS)などを通じて、グローバルな半導体産業の発展と国際協調にも積極的に貢献してまいります。
JSIAは会員企業の皆さまと力を合わせ、日本が「半導体を創る国」であるだけでなく、「半導体で価値を創る国」として世界のイノベーションを牽引できるよう取り組んでまいります。そして、半導体を通じて社会課題の解決と持続的な成長に貢献し、より豊かな未来の実現を目指してまいります。
皆さまの一層のご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
2026年8月
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)
半導体部会(JSIA)部会長 新開 崇平