半導体の大冒険〜南部ユーコ冒険隊のニコニコインタビュー

半導体冒険隊長の南部ユーコです。

今回は、捨てられていたエネルギーを利用する、夢のエコ発電技術があるとの情報をキャッチし、「慶應藤沢イノベーションビレッジ」の「音力発電」さんにお伺いしました。

インタビュー

−初めまして。今まで捨てられていたエネルギーを電気に変えることができるとお伺いしました。

初めまして。音力発電の速水と申します。
弊社では「振動力発電」という技術を用いて、捨てられていたエネルギーを有効利用することにより、これまでに無い切り口から、エコ社会への貢献を目指しています。

−振動力発電とはどのようなものなのですか。

世の中には、人が歩いた時、ボタンを押した時などに発生する「振動」と言うものがあふれています。
この「振動」を電気に変える事を振動力発電と言います。

振動力発電は「振動」を電気に変えるので、その場で発電して、その場で消費できます。
このため、発電時の環境負荷が小さいですし、電気の管理や複雑な配線も必要なくなります。
振動力発電の考え方自体は以前からありましたが、発電量が非常に小さく使えないエネルギーとして見られていました。

株式会社音力発電  速水浩平  代表取締役

−実現すれば今までにないエコですね。どうして、その様な研究をしようとなされたのですか。

小学生のころ、発明ノートというものを作っていて、その中の一つが振動力発電の元になっています。
電気でモーターが回り、モーターが電気を作る。それと同じように、スピーカーが電気で音を作るなら、音(振動)で電気を作れるのではないかと思ったわけです。
この、音から電気を作るという発想が社名の「音力発電」になっています。

−小学生の時からそのような発想があったなんて、立派な発明家ですね。

高校生の時から大学発のベンチャー企業を意識しはじめ、起業を支援していただける大学を探しました。
当時は、大学の起業支援やオープンイノベーションに対する考えがそれほど進んでいませんでしたので、起業を支援していただける「慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)」の存在に大きな魅力を感じたものです。

入学後に発明ノートを元に六つの研究にチャレンジしましたが、最初は失敗の連続ばかりでした。
研究テーマとして振動力発電にたどり着いた後も、最初の内は、思うような結果がでなくて周囲の方にも認めていただけませんでしたけれども、自分でやれることは全てやったと納得するまでは、あきらめようとは思いませんでした。
元々研究開発と言うのは、できなかったことをできるようになるから価値があるのではないか。と思いながら研究を続けました。

できることを信じてあきらめずに研究を続け、その年の学期末の最終発表において最初の試作機を見せた時、これまで批判的だった周囲の方々に初めて認めていただいた時の喜びは今でもはっきりと覚えています。
その時から、企業や自治体の方々から研究の成果を商品として扱っていただけるようになりました。

−様々な苦労があったのでしょうね。その時に注意なさった点はありましたか。

皆さんに使っていただけるように商品化を常に意識していました。具体的には、応用例とコストダウンです。
応用例は300以上ありますし、コストダウンについてもいろいろな方面の方々に助けていただきました。
一般的に馴染みのない技術なので、応用例の提案と、導入時のコストダウンをしなければ採用していただけません。
持論ではありますが、研究開発は皆さんに使ってもらってこそ、価値があると思っています。

−素晴らしい考え方ですね。では、研究の成果である製品はどのようなものがありますか。

弊社の振動力発電は主に、(1)LEDの発光、(2)無線の送信、(3)音の発生をすることに使用できます。
その中で一番ご利用いただいているのがLEDを発光させる「発電床®」です。
この発電量自体は小さいのですが、踏むだけで発電し、廊下や階段の誘導灯やイルミネーションの点灯に使えます。
日本全国の商業施設でご利用いただいておりますので、皆さんの身近なところにもすでに導入されているかもしれません。

発電床:ららぽーと新三郷案内板
発電床:ららぽーと新三郷案内板

他にも、リモコンのようにボタンを押す事で無線を飛ばしたり、音を発する事で視覚障害者の方の支援ツールやお子様のおもちゃにも使うことができます。

−そこまで製品化が進んでいるとは。お伺いするまでは夢のような技術だと思っていたのにビックリです。では、トータルシステムとして半導体に望む事はありますか。

弊社の製品は小さな発電量で動く必要があります。ですから、製品を構成する半導体には今よりも低消費電力で高効率に動作するものが欲しいですね。
そのような半導体を使えば、製品の動作効率も良くなり発電時間も長くなるし、さらに応用例を増やすことができるようになります。
そして、今は汎用的な半導体を使っていますが、弊社と一緒に考えていただけるような、振動力発電向けの半導体があると嬉しいと思う事もあります。

−半導体の責任も重大ですね。最後になりましたが、今後の夢はなんですか。

夢ではありませんが、実現させたい目標が二つあります。

一つ目は、
現在、弊社の発電床を始めとする製品と技術は、主に商業施設でご利用いただいておりますが、近年よく叫ばれている、環境発電(エネルギーハーベスト)として皆さんの生活に根付くことができると考えています。
そこに、皆さんのライフスタイルを変えるぐらいの提案をしていきたいと思います。

二つ目は、
研究や製品の開発を通して、企業、自治体、学校などいろいろな方面の方々にお世話になっております。その時に、すぐには必要でなくても、知っておくことが後々役に立つ事、自分の知る範囲を広げることが、そのまま可能性を広げる事、を感じてきました。
弊社の経験を通して、いままでになかったネットワークの橋渡し的役割をしていきたいです。

−壮大なスケールの目標ですね。とてもスムーズに事業化され、大成功される様子が目に浮かびます。ありがとうございました。

プロフィール

2002年 4月:慶應義塾大学 環境情報学科 入学
2003年 4月:『音力・振動力発電』の研究開始
2006年 3月:慶應義塾大学 環境情報学科 卒業
2006年 4月:慶應義塾大学 大学院政策・メディア研究科 修士課程 入学
2006年 9月:株式会社音力発電設立 同社代表取締役就任
2008年 3月:慶應義塾大学 政策メディア研究科 修士課程 修了
2008年 4月:慶應義塾大学 政策メディア研究科 博士課程 入学
2010年 3月:慶應義塾大学 政策メディア研究科 博士課程 自主退学

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