半導体冒険隊長の南部ユーコです。
ロボット宇宙飛行士「キロボ」、10万体を販売した「週刊ロビ」の生みの親として、多方面でご活躍中のロボ・ガレージ社長でいらっしゃるロボットクリエイターの高橋さんにお話を伺いに、研究室がある東京大学駒場キャンパスに行ってきました。
−初めまして。本日はよろしくお願い致します。
こちらこそよろしくお願いします。
−ロボット宇宙飛行士キロボくんの宇宙活動の成功おめでとうございました。早速ですが、高橋さんが目指されているロボットの世界についてお話をお聞かせください。
ロボットには、様々な可能性があると思いますが、私は、人と対話する小型のヒューマノイドロボットに最も大きな可能性があると考えています。
−身近にいる人型ロボットというと、掃除や料理などの家事の手伝いをしてもらうイメージでしょうか。
いいえ、それはよくある誤解で、人型ロボットに、掃除機を使わせたり、台所でお皿を洗ったりさせる意味は無い。それは、ルンバのような専用の掃除ロボットや食洗機で行うべきで、人型である必要はありません。人型をしている意味とは、人がそれを擬人化して感情移入し、コミュニケーションを取ろうと思えることなのです。
【ご紹介】Robiくんとの一幕。
高橋さん「Robiくんは何ができるの?」
Robiくん「色々できるよ。お留守番とか踊ったりできるよ」
高橋さん「踊ってみて」
Robiくん「いいよ。いくよ」
といって、音楽に合わせてダンス披露
その後、「あ〜疲れた、よっこいしょ」といって座ってしまったRobiくん
―会話する人型のロボットが、高橋さんの目指されている方向性ということでしょうか。
そうです。例えば我々はスマートフォンの音声認識をほとんど使っていない。それは四角い箱に喋りかけることに心理的な抵抗感があるからです。一方で、言葉が分からない、家で飼っている金魚やカブトムシにすら話しかけてしまう。つまり、コミュニケーション対象の知性よりも、生命感こそが重要なのです。だから音声認識機能を備えた小型ヒューマノイドロボットとならば会話しようと思えるのです。ただし、その際には、外観のデザインのみならずスムーズな動作や発話内容など、細部のデザインをバランス良く整えてやる必要があります。
―なるほど、つい色々なことを話し掛けたくなりそうですね。しかしロボットとのおしゃべりは何かに役立つんでしょうか?
今ほぼ全てのITサービスは、ユーザーの行動履歴を収集して、ユーザー毎にカスタマイズされたサービスを提供しています。もしも我々が日常的にロボットと対話をすれば、より良質なライフログデータが収集出来、よりきめ細かいサービスを還元することが出来るはずです。
―スマホよりも多くの情報が取れると?
はい。今収集出来る情報は、何かの目的を持って操作しているパソコンやスマホを通じて授受しているものに限られています。それよりも、日常生活の中の、何気ない会話にこそユーザーの嗜好やライフスタイルに関する、より重要な情報が含まれています。また、ユーザーとの信頼関係を築いたロボットから提供される情報やサービスは、一般的な検索エンジンやショッピングサイトから提供されるものよりも、ユーザーにより強い影響を与えると考えられます。
―会話の場は、家の中に限られませんか?
ポケットに入るサイズを目指しており、今のスマホに代わって持ち歩くようになるでしょう。ゲゲゲの鬼太郎の目玉おやじのようなイメージです。他にもティンカーベルやピノキオに出てくるコオロギ君、ジブリのアニメ、プリキュアにまで、小さくて物知りな相棒が主人公を助けてくれるストーリーは、古今東西よく見られます。人はそのような存在をずっと欲していたのかも知れません。
―子供の頃に夢みた世界を体験できそうで、ワクワクしてきました。
これまでの日本は、機能や性能、コストパフォーマンスが強みでしたが、海外にキャッチアップされてきています。今後は人の感情、愛着といった人間の感覚を理解し活用した商品・サービスを展開していくべきでしょう。そこでは単に数値化できる性能競争や価格競争ではなく、人間性や文化との融合が求められるので、より日本の強みを生かせるはずです。
―今日は、夢のあるお話をありがとうございました。近いうちに、街で自分の相棒ロボットを手に会話する光景が見られそうですね。
高橋 智隆(たかはし ともたか)
2003年 京都大学工学部物理工学科メカトロニクス研究室卒業
同年 株式会社ロボ・ガレージ創業 代表取締役社長
東京大学先端科学技術研究センター特任准教授
大阪電気通信大学メディアコンピュータシステム学科客員教授
ヒューマンキッズサイエンスロボット教室アドバイザー