2005年12月9日、ウィルコムの「WZERO3」予約受付開始日に、家電量販店では徹夜の行列ができた。 発売日を迎えた12月14日朝にも当日販売分を求めて約60人が行列を作った。
一部のゲーム機では、発売日に行列ができることもあった。 しかし、携帯電話機やPDA( 携帯情報端末:Personal Digital Assistant)などの情報電子機器では初めての珍事である。 これが日本でのスマートフォン市場の幕開けの日となった。
海外では、2001年がスマートフォンの始まりであった。その後北米では数多くの機種が発売されており、 日本での発売を待ち望んでいたユーザが国内初のスマートフォンを歓迎し携帯電話業界に大きな波を作った。
1990年代半ばに話題となったPDAは、ノートパソコンの小型化・低価格化と、携帯電話機の高機能化との狭間で、 市民権を得ることなく携帯電話機に取って代わられた。当時、携帯電話機では画面サイズが小さい、 パソコン向けのWebコンテンツが見られない、自分好みにカスタマイズできない、など潜在的に不満を感じているユーザも多かった。
スマートフォンの多くは、パソコンに非常に近いOS(Microsoft社の「Windows Mobile」)を採用しており、パソコンとの親和性が非常に高い。 Windowsで使っているWordやExcel、PowerPointといったファイルをそのまま扱うことができる。インターネットブラウザも、 パソコン向けのWebコンテンツの多くがそのまま閲覧できる。
スマートフォンの多くが、通常のコンピュータと同じQWERTY配列のキーボードで入力を行う。なかには、 携帯電話機と同様にテンキーだけで入力する機種や、QWERTYキーボートとテンキーの両キーを備えたPDAに近い機種なども発売されている。 液晶画面は2.4 〜 3.7インチ型で、QVGA(320×240画素)、VGA(640×480画素)、WVGA(800×480画素)と多様性に富む。 使用目的や入力方法によって最適な機種が選択できる(図2-1-A)。
さらに、2008年7月に発売された米Apple社の「iPhone」は、キーボードを搭載していない。すべて画面タッチの操作だけでWebコンテンツの閲覧、 音楽や映像などマルチメディアコンテンツなども操作できる斬新性で海外でも評判になった。
スマートフォンが携帯電話機と大きく異なる点は、利用者がアプリケーションを自由に追加して機能拡張やカスタマイズができることである。
インターネット上に数多く公開されているシェアウェアやフリーソフトを入手し、利用者が自分の好みに合わせてカスタマイズし、 また機能を追加したりすることができる。
すでに企業向けのミドルウェアやアプリケーションも100種類以上が登場している。スマートフォンを企業で導入する場合、 セキュリティ対策が重要な要素である。電源を入れたときのパワーオンパスワード、内部および外部記憶媒体の暗号化、 カメラや入出力インタフェースのデバイス制御、公衆回線をあたかも専用回線であるかのように利用できるVPN(Virtual Private Network)用ソフト、 ウィルス対策ソフトなど、あらゆるセキュリティソフトがサードパーティから提供されている。
スマートフォンは、現在個人利用者が中心となっているが、今後企業導入が進み、成長を続け、さらなる進化を遂げるであろう。