2008年11月7日、JEITA半導体人材戦略小委員会(以下、人材戦略小委員会)は、半導体を始めとするエレクトロニクス関連の研究機関や企業が多数集積する北九州学術研究都市を訪問しました。
同学研都市は、北九州市の若松区から八幡西区にまたがる総面積約335haの広大な事業区域です。北九州市がアジアの学術研究の中核拠点となり、そこから新たな産業の創出や高度な技術開発が行われるようになることを目指して1995年に第1期事業が開始され、現在は2013年度を最終年度とする第2期事業が進行中です。
ここには北九州市立大学、早稲田大学、九州工業大学、福岡大学の4つの大学・大学院が環境関連・エレクトロニクス関連の学部、学科、研究科を置いており、同じく拠点を置く60の企業(平成20年10月現在)や国内外の複数の研究機関と相互に連携しながら、新しい技術や価値の創造に取り組んでいます。
もともと九州は半導体の生産額で全国の30%近くを占める一大集積基地であり、大手電機メーカーの半導体生産工場や半導体系ベンチャー企業も多く進出しているという背景があります。そのような地域に学ぶ大学生、大学院生の半導体産業に対する意識を探ることを主な目的として、人材戦略小委員会から7名の委員が意見交換に臨みました。
人材戦略小委員会・主査からの訪問目的の説明に続き、財団法人北九州産業学術推進機構(FAIS)の専務理事、半導体技術センター長、カー・エレクトロニクスセンター長から、学術研究都市の概要及び両センターの活動紹介がありました。学研都市の視察の後、早稲田大学大学院情報生産システム研究科の池永准教授、北九州市立大学国際環境工学部の梶谷教授ら学生を指導する立場の教育者の皆様と意見交換を行い、将来の半導体産業を支えるであろう優秀な学生への動機づけの在り方や、学研都市から多数輩出されるエレクトロニクス人材の活用、研究成果の事業化に向けての密接な協力関係の構築など、今後の産学連携の方向性について活発な議論を交わしました。
後半は、北九州市立大学の学部生・大学院生と早稲田大学の大学院生の合計24名を迎えての意見交換会を実施しました。両大学からはアジア地域からの留学生も参加しました。
大学生から半導体業界に寄せられた意見は
・日本の半導体技術は先進的である ・研究開発を先導し、チャレンジな課題に取り組んでいる ・半導体業界に就職したい ・半導体は将来性がある ・Qualityの高い仕事が出来そう
等の積極的意見も出されましたが、その一方で、
・海外の競合に押されているように見える ・競争が厳しく、仕事が忙しそう(仕事以外に自分の時間を確保したい) ・自分の専門性を生かす仕事ができるのか? ・業務内容がいまひとつイメージしにくい ・社内で英語でコミュニケーションできる環境にして欲しい(留学生) ・インターンシップ制度を拡大して欲しい(留学生)
等々、半導体各社と当小委員会で取り組むべき課題も浮き彫りになり、非常に有意義な意見交換ができました。
最後にアンケート調査をした結果、
・大部分の学生が半導体関連の会社への就職を考えていた。 ・半導体技術動向と省エネ社会貢献の話題は、興味をもって聞いてもらえた。 ・意見交換会(自由討議)は有意義であったと等の回答がありました。
大学生との意見交換会により半導体産業界の理解が進み、有意義な訪問となりました。
JEITA半導体人材戦略小委員会では、2007年度に実施した立命館アジア太平洋大学、同志社大学での意見交換会での結果と合わせ、今後の半導体業界における人材確保と教育の在り方について、さらに検討を行っていく予定です。
(ご参考)
財団法人北九州産業学術研究機構(FAIS) http://www.ksrp.or.jp/fais/