「ハイテク・ユニバーシティ」はSEMIが2001年に開始した、高校生を対象とした教育プログラムです。
これまでに、米国を中心に100回以上開催されており、2700人以上が受講しています。
日本では2007年に第1回目が熊本県、2008年に茨城県、2009年に滋賀県にて開催されました。
JEITA(社団法人 電子情報技術産業協会)半導体部会は協賛団体としてこの活動を支援しています。
半導体業界では、「ハイテク・ユニバーシティ」を通じて、高校生に科学・技術の面白さ、半導体産業の重要性を伝え、理系への進学、半導体産業への就業への関心を喚起し、ひいては次世代を担う有用な理系人材の育成・確保を推進していきたいと考えています。
第4回ハイテク・ユニバーシティは3月25日(木)と26日(金)の2日間で、広島県教育委員会の後援をえて、広島県で開催されました。
県下の豊田高等学校、呉商業高等学校、呉工業高等学校、広島工業高等学校、庄原格致高等学校の5校から33名が参加しました。
第一日目(25日)は(株)ディスコの桑畑工場にて開催されました。
(株)ディスコは精密加工装置(半導体ウェハ切断装置、研削・研磨装置など)の製造販売を行っています。
まず、GCDF−Japanのキャリアカウンセラーの金津豊氏による自己紹介とチーム作りから始まりました。続いて、(株)ルネサステクノロジ マイコン統括本部MCUツール製品技術部 主管技師の吉岡桂子氏による講義「いつもあなたのそばに〜私たちの暮らしの「ベンリ」の秘密、半導体〜」があり、マイコンとメモリの違いを分かりやすく解説しました。身の回りにある便利な電子機器が半導体により作られていることを理解してもらいました。
シャープ(株)通信システム事業本部総務部 副参事の金子講治氏は「エコについて考えよう〜低炭素社会に向けて〜」と題して、半導体技術が低消費電力の電子機器や太陽電池を提供し、省エネ社会を実現していることを話しました。
午後は実習形式の「俺ツ コンピュータ!?!?(人間計算機体感ゲーム)」で、東京エレクトロンFE(株)会長の石井浩介氏が論理回路の原理を説明したあと、シートに印刷した加算機の上で、それぞれが論理ゲートになりきり、入力情報を得て出力情報を次のひとに手渡し、デジタル論理回路の計算を体感しました。 2ビットの加算に約10秒かかり、実際のコンピュータでは1秒間に1億回以上の計算が出来ると説明すると「ワー!!」という驚きの声があがりました。 座学だけでは理解が難しい論理回路を体感学習することにより理解がすすんだようです。 続いて「小さな半導体と大きな仕事〜グローバルを感じていますか?〜」と題して、(株)ルネサステクノロジ 資材調達統括部エンジニアリング調達部 主任のプレマル・ワキル氏(インド国籍)が、インドと日本の文化の違いや、グローバルに働くための心構えを述べ、半導体産業が国境を越えたグローバルな産業であることを紹介しました。 高校生たちは、努力家で、来日6年で流暢な日本語をしゃべり、ビジネスをこなし、中国語も勉強中のワキル氏におおいに刺激を受けたようです。 最後に工場見学を行ない、ダイシングソー装置で直径0.5mmのシャープペンシルの芯に縦横に10本の溝を切り込むデモを見学して終了しました。
第二日目(26日)はエルピーダメモリ(株)広島工場にて開催されました。 エルピーダメモリ(株)は1999年に日立製作所とNECの半導体メモリ部門を統合して設立された会社で半導体メモリDRAMを製造しています。 まずは講義「世界に羽ばたく半導体エンジニア」から始まり、(株)荏原製作所 常務執行役員技術・研究開発統括部長兼精密・電子事業カンパニーバイスプレジデント兼技術統括部長の辻村学氏が、半導体開発のトレンド、世界トップの製造装置例、常識を破った開発例、開発=Something Newなどについて、世界中を飛び回った経験をもとに楽しく話しました。 工場見学ではクリーンスーツに着替えて製造ラインを見学しました。 クリーンスーツ着用は始めての経験で大騒ぎでした。 国内最大級の最先端300mm製造ラインは、全長580mで広島市民球場8個が入る大きさということでした。 40nmの線幅で2Gビット等のDRAMを生産しています。
午後は「ミクロの世界、そしてナノの世界へ」という実習で、(株)日立ハイテクノロジーズ・分析システム営業本部マーケティング二部の上村健氏が電子顕微鏡の原理を説明した後、携帯電話を分解して半導体チップを取り出し、電子顕微鏡で観察しました。
鮮明な画像が現れると歓声があがりました。
次に「半導体業界での仕事」というテーマで就職進路についてゲーム形式で企画、営業、技術などチームで議論しながら自分のやりたい仕事を考えて貰いました。
また、先輩の助言とパネルディスカッションではエルピーダメモリ(株)、(株)ディスコ、(株)日立ハイテクノロジーズ、東京エレクトロン(株)、大日本スクリーン製造(株)の若手社員5人が、高校生からの質問、高校や大学で学んだ知識が役に立ったか?なぜその企業を選んだのか?仕事や給料に満足しているのか?などに答えながら助言を行ないました。
最後のアンケートでは、生徒からは楽しかった、半導体産業の営業に興味を持った、半導体などのハイテク産業に入りたい、オンリーワン・ナンバーワンを目指したい、半導体について理解できた、ミクロの世界に興味を持った、常識を破って限界に挑戦したいなどの感想が寄せられました。
先生方からは生徒たちが進路を考える契機になり良かった、半導体の中身が理解できた、理系に進む生徒が増えるのではないかなどのコメントを頂きました。
理系離れが喧伝されるなか、これからの日本を支える高校生に理系や半導体に興味を持ってもらい、成功裡に終わりました。
(JEITA半導体部会 人材戦略小委員会 主査 平田雅規)
2010年3月31日