半導体産業委員会・講演会開催(2月28日:於JEITA)
「国際会計基準による開発支出の資産化」に関する講演会を開催しました。

半導体部会・半導体産業委員会では、委員会参加各社の活動に資する事業の一環として、業界として関心が高く注目されるテーマ等を選定し、講演会を開催しております。
今回は、下記の演題で講演頂きました。

「国際会計基準(国際財務報告基準)に対応した開発関連支出の資産化について」
            講演者:新日本有限責任監査法人 松本 暁之 氏

「国際会計基準による開発支出の資産化」に関する講演会を開催しました

概要

国際会計基準に則し、半導体産業に適した研究・開発・試作費から発生する特許、ノウハウ、部材などの支出から見た資産化に関する指針と概要の紹介を頂きました。

  1. IFRSを巡る動向(日本・米国)
    【日本】2009年6月に日本版ロードマップの公表、2011年6月に「少なくとも2015年3月期についての強制適用は考えておらず、仮に強制適用する場合であってもその決定から5~7年程度の十分な準備期間の設定を行う。2016年3月期で使用終了とされている米国会計基準での開示は使用期限を撤廃し、引き続き使用可能とする。」との金融担当大臣の発言がなされ、2012年7月に国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの論議(中間的論点整理)を公表し、その中で、「現時点において、いくつかの論点(検討項目7項目)について委員の意見になおかなりの隔たりがあり、最終的な結論が出ているわけではなく、さらに審議を継続して議論を深める必要がある」とされた。
    【米国】2008年11月にロードマップ案を公表、2010年2月にSEC声明とワークプランを公表、2011年5月および11月にSECスタッフ・ペーパーを公表、2011年12月にIFRS組込みに関する意思決定延期後、2012年7月にワークプランで特定される6項目に関する、SECスタッフの調査結果をまとめた最終スタッフ報告書(最終報告書)を公表した。
  2. IAS第38号無形資産の概要
    IAS第38号における無形資産の適用範囲や無形資産が物理的実態のない識別可能な非貨幣資産である事の説明に続き、以下の要点についてご紹介頂きました。
    ・無形資産は、資産に起因する、期待される将来の経済的便益が流入する可能性が高い(50%以上)もの、また、当該資産の取得原価が信頼性を持って測定できるものが無形資産である。なお、無形資産は、取得原価で当初測定しなければならない。
    ・認識および測定の内、内部創出のれん以外の内部創出無形資産は、その創出プロセスに応じ、研究活動と開発活動とに区分し、追加的な要件のもと認識可能になる。なお、研究活動に関する全ての支出は発生時に費用として処理しなければならない。さらに、開発活動から生じた支出は一定の条件を満たした場合には無形資産として認識しなければならない。
  3. 開発関連支出の資産化
    • 開発関連の支出を資産計上できる条件は、以下のすべての条件を立証しなければならない
      (資産化6要件);
    1. 使用または売却できるように無形資産を完成させること、技術上の実行可能性
    2. 無形資産を完成させ、さらにそれを使用または売却するという意図
    3. 無形資産を使用または売却できる能力
    4. 無形資産が可能性の高い将来の経済的便益を創出する方法
    5. 無形資産の開発を完成させ、さらにそれを使用または売却するため必要となる、適切な技術上、財務上およびそのたの資源の利用可能性
    6. 開発期間中の無形資産に起因する支出の信頼性をもって測定できる能力内部創出無形資産の取得原価の範囲は、資産の認識要件(資産化6要件)を最初に満たした日、以降に発生した原価の合計となる。なお、4.をどの様に見るかによって、恣意的な面を否定できない。
    • 開発関連支出の資産化に係わる実務上の論点では、以下が挙げられている
    1. 研究と開発の定義:
      1. 研究:
        新規の科学的又は秘術的な知識及び理解を得る目的で実施される基礎的および計画的調査
      2. 開発:
        商業ベースの生産又は使用の開始前における、新規の又は大幅に改良された材料、装置、製品、工程、システム又はサービスによる生産のための計画又は設計への、研究成果又は他の知識の応用
    2. 開発関連の支出を資産計上できる条件:
      資産化6要件の内特に@技術上の実行可能性及びC将来の経済的便益の創出に関する判断いついては、開発関連支出の資産化検討において実務上の論点になりやすい。
      1. 技術上の実行可能性:
        技術上の実行可能性の定義について画一的な解釈が存在しておらず、“技術上の実行可能性”の捉え方そのものにばらつきが生じやすい
      2. 将来の経済的便益の創出:
        開発局面において経済的便益を生み出す可能性が高いか否かの判断は、非常に高い見積もり要素および経営者の意思に依存する。
    3. 資産化の対象化対象範囲:
      開発局面(商品開発)になり、その中を分解し、技術上の実行可能性と将来の経済的便益を除く4条件は、初期の段階でクリアーしているとし(大手であればクリアーしているはず)前記2条件の成立ポイントを探る。
    4. 半導体の開発特性に基づく整理:
      (i)顧客カスタム品、(ii)顧客カスタム品⇒汎用品、(iii)汎用品の3つのカテゴリーに分けて考えると。(i)では、顧客認証後、(ii)では、汎用品としての開発段階、(iii)では、試作評価の前後となる。
    5. 将来の経済的便益の創出:
      経営者の意思が強く反映する為、前記のポイントは、それによってずれてくるが、恣意性を排除するためには、基本的には、開発局面の後半に持ってくる。

【用語】

  • 国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、IFRSs、IFRS)
    国際会計基準審議会(IASB)によって設定された会計基準
  • 国際会計基準(International Accounting Standards、IAS)
    IASBの前身である国際会計基準委員会(IASC)によって設定された会計基準
  • 国際財務報告基準は、国際会計基準を含む総称として広義で用いられることもある。

以上

半導体模倣品に対する注意のお願い F-GHG測定・管理ガイドライン DFM(design for manufacturability:製造性考慮設計)用語集 DFM(design for manufacturability:製造性考慮設計)用語集 DFM(design for manufacturability:製造性考慮設計)用語集 新規追加版 よくわかる半導体 半導体の社会貢献 半導体ミニ辞典 半導体の大冒険 BCMへの取り組み