グローバル標準化戦略の第一人者 江藤学先生にご講演をいただきました(2014年6月13日)
日時:2014年6月13日(金) 16:00-17:00 於:JEITA会議室
JEITA半導体産業委員会では、委員会各位の知見を深める目的で、2ヶ月に1度、関係各方面の第一人者をお招きしご講演を頂いております。
今回は、グローバル標準化戦略に関して非常に斬新な視点をお持ちで、グローバル標準化戦略研究の第一人者である江藤学氏をお招きし、今後の日本半導体産業界にとって世界を相手にビジネスを展開する上で標準化等、重要な考え方のご講演を頂くことが出来ました。
参加者一同、世界の標準化トレンド、ヨーロッパの自動車産業の中での半導体部品の活発な標準化活動に関する理解を深める大変良い機会となりました。
講演会の概要
- 演 題:標準化の新しい動き
- 講 演:一橋大學イノベーション研究センター 特任教授 江藤 学 氏
- 聴 講 者:半導体産業委員会
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主な内容:
- グローバルビジネスの変化
- 標準必須特許(SEP)に対する判例
- 欧州企業の標準化事例
- 標準のプライベート化
これらの変化を受けて事業活動をどう見直すのか、その時の標準化の役割は何か?
講演内容の詳細は以下の通りです。
【グローバルビジネスの変化】
- グローバルビジネスは価値づくりから価値探しへ、デパートから専門店へ
- 「競争に勝つ」より「競争相手を作らない」ことが重要に
- 市場の多様化で、一社が市場全体を支配する時代は終焉を迎えた
- 標準化活動ではマルチスタンダードの一般化が進み、特許で標準獲得を争うより市場で競争する時代へ
- 技術開発のスピードがデファクトスタンダード収斂より早い時代を迎えた
- 一人勝ち出来ない時代、一緒に儲けることの出来る仲間づくりが重要
【標準必須特許(SEP)に対する大きな流れ】
- 標準化は特許の無力化ツールとして重要な価値を持つ
- 皆が使いたくなる標準化技術の提案を行い、参加者全員が出来上がった標準に納得することが大切
- 利益の独占をせず、参加者の要望を受け入れるなどコンセンサス標準化でオープンイノベーションを実現することが重要
- 同じ技術を使うことを義務づけ、推奨するという手段もある
【欧州企業の標準化事例】
- 欧州自動車業界に関して、部品の標準化が非常に合理的かつ戦略的に進行中
- 自動運転技術に必要な無線通信の規格策定も検討中
- 日本自動車工業会の対抗策として『国際標準化検討会』を設置し関連会社による半導体を含めた、部材仕様を統一しようとしている
- これらは、調達力を背景に標準化によるコストダウン圧力をかける自衛策
【標準化のプライベート化】
- 食品・農業では既にプライベートスタンダードが広く普及しており、一社の調達基準がデファクト化し市場全体を支配している
- プライベート認証が拡大し、製品差別化と仲間集めが進行している
【新市場の創設と知財・標準化】
- 新しい市場を一緒に創れる仲間が必要
- 利益の総取りではなく分かち合える仕組みをつくる
- 敵を味方にする戦略が必要