今回は、一橋大学イノベーション研究センターの江藤 学 特任教授に「仲間作りのための標準化戦略」についてご講演いただきました。以下概要をご紹介します。
江藤 学 先生 |
商品の上流下流、たとえば試験検査、製造装置に関する標準など、様々なところで標準化が存在する(もしくは生まれる)可能性がある。パワー半導体も標準化が必要との観点から考えると、望ましい標準化であればよいが、方向性が異なる標準化が、関与できない組織体で進んでいる場合がある。
パワー半導体に関係しそうな標準化で、試験方法を例に挙げると、市場の創生期には有効な試験方法を有識者に働きかけ、製品の優秀性が評価される試験方法の標準や規格の制定を目指すことが重要である。市場成熟期の段階に入ってからは、標準化は困難である。また、インバーターやスイッチング電源、電気自動車、エアコンといった1段、2段先の階層で優位な状況をつくるような測定・評価方法の標準化も重要である。
一方で、B to B取引ではデファクト化し、ユーザーに使ってもらう方法がある。標準化をする場合、ユーザーが選択する基準となる、1段先も含めた戦略を練る必要がある。
競合が予見される場合には、「ユーザーが選択しやすい商品」を観点に試験方法を含んだ標準化を確立する必要がある。日本の風土として、仲間同士の様子見姿勢が強く、知らない間に他社(特に海外の)に負けるケースがある。自らの意思を反映した戦略を立てなければならない。得意とする事柄を売り込む時代である。
標準化に取り組むタイミングは非常に重要である。調達の仲間作りと、市場を広げる場合では戦略が異なる。骨子が固まり、まだ議論する余地があるときに仲間を誘うべきだ。
標準化は、企業全体としての戦略で、ある部門が儲からなくても、他部門が儲かれば全体の利益に繋がる考え方でやるべきである。こうした考え方が普及していくことを期待したい。