東京大学 桜井教授が、2010年 IEEE Donald
O. Pederson Award in Solid-State Circuits
を受賞されました!


授賞式にて賞状を手渡される桜井教授(左)(2月8日 カリフォルニアにて)
授賞式にて賞状を手渡される桜井教授(左)
(2月8日 カリフォルニアにて)


東京大学生産技術研究所の桜井貴康教授は、半導体回路分野の研究の第一人者であり、現在産学で連携して取り組んでいる国プロ「極低電力回路・システム技術開発プロジェクト」においてリーダを務められるなど、我々JEITA半導体部会とも縁の深い先生の一人です。

今回、桜井先生が行ってこられた研究が高く評価され、「高速低電力CMOS論理回路における設計とモデリングへの先駆的な貢献」に対して、 集積回路研究で最も権威のある国際的な賞である 「IEEE Donald O. Pederson Award in Solid-State Circuits」が授与されました。 (IEEEのサイトに詳細があります

この賞の創設は1987年であり、以来受賞者には、半導体回路シミュレータSPICEモデルBSIMの開発者であるChenming Hu氏(あるいはアナログ設計の大家であるAsad Abidi氏)、 Rambus社の創業者の一人のMark Horowitz氏、無線LANのTeresa H. Meng氏といった錚々たる研究者が名を連ねています。 桜井教授が今回の栄誉に浴したことは、日本における半導体研究のみならず半導体産業にとっても非常に意義深いことであり、 この分野の一層の飛躍の契機になると期待されます。

先生の受賞を心よりお喜び申し上げます。


受賞インタビュー

(聞き手: JEITA半導体部会広報 於: 東京大学桜井教授室)

JEITA: 桜井先生、この度は、IEEEピーダーソン賞の受賞おめでとうございます。
桜井教授: ありがとうございます。
J: ピーダーソン賞というのは、大変権威のある賞ですね。
桜: 半導体回路に関する研究に対して贈られる最高位の賞で、毎年受賞者は一名もしくは該当者なしとのことで、大変光栄に思っています。
J: 賞に冠されているピーダーソン教授とは、実際にお会いになったことがあるそうですね。
桜: そうです。1988年から1990年に、UCバークレーに、当時東芝の社員として派遣されたのですが、その頃ピーダーソン教授はUCBにおけるCAD関連の研究で精神的な支柱ともいうべき存在で、直接話を伺いご指導頂きました。好々爺とした印象が忘れられません。
J: 賞状を拝見させて頂いてもよろしいでしょうか。
桜: どうぞ。カリグラフィック・ライティングというんですか、手書きの賞状です。よく見ると字の濃さが変わっているのがわかります。
J: 日本でも見事な毛筆の手書きの賞状がありますが、欧米にも同じ世界があるのですね。
桜: そうですね。それからこれが受賞メダルです。

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受賞メダルを手にする桜井先生

J: ズシリと重いメダルですね。メダルに刻まれている顔は?
桜: ピーダーソン教授ですね。以前は、「Solid-State Circuits Award」という名称でしたが、 2005年に改称され、先生の名前が冠されました。日本人の受賞は、私が3人目で、17年ぶりのことです。これから伸びてくるアジア勢の先駆けになればと期待しています。
J: 受賞を機に思うことは何でしょうか。
桜: 日本は技術力は高いのだけれど、それが日本半導体産業の強さに結びつけられていないと思います。最近、「三流の国はものづくり、二流国は研究開発、一流国はしくみを決めるトレンドセッター」、という話がありますね。高い次元でどんどん国際的に仕掛ける姿勢が大事ではないでしょうか。東大前総長の小宮山さんが提唱されている「課題先進国」という発想、世界に先行する少子高齢化、介護・医療等の課題をいち早く解決することが、日本のチャンスになるという発想に、ひとつのヒントがあるのではないでしょうか。
J: 若手研究者へのメッセージをお願いします。
桜: UCBでの経験は、学術面もさることながら、グローバルなヒューマンネットワークができたことがとても重要だったと感じています。若い人にはどんどんと海外に出て行って活躍の場を広げてほしいと思います。
J: 改めまして受賞おめでとうございました。本日はありがとうございました。

IEEE Donald O. Pederson Award in Solid-State Circuits のメダル
IEEE Donald O. Pederson Award
in Solid-State Circuits の受賞メダル


授賞式の会場の様子
授賞式の会場の様子


桜井 貴康教授のプロフィール

東京大学生産技術研究所教授

【略歴】 昭和56年3月、東京大学電子工学専攻博士課程修了。工学博士。同年4月(株)東芝入社、半導体技術研究所にてDRAM、高速SRAM、世界初のDRAM混載ASIC等の設計研究開発に従事。また、広く使用されているα乗則MOSモデル等を提案。1988年から1990年までU.C.Berkeleyにて半導体 CADの研究を行った。その後 (株)東芝に帰任し、世界初のMPEG2用LSI等のシステムLSI開発をマネージメント。1996年より東京大学、生産技術研究所教授となり、高速・低消費電力LSI設計などの研究に従事。2010年IEEE Pederson賞、2009年電子情報通信学会業績賞、2005年IEEE ICICDT賞をはじめ数々の賞を受賞。IEEE VLSIシンポジウム会議委員長、IEEE A-SSCC運営委員長、IEEE ICICDT委員長、等々を歴任。現在、VLSIシンポジウムExecutive委員長、IEEE A-SSCC Steering委員長。IEEE、電子情報通信学会、日本応用物理学会会員。IEICEフェロー、IEEEフェロー。

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