近年、大学における理工系の人気凋落が喧伝され、将来の半導体産業を担う若手技術者の不足が懸念されています。JEITA半導体部会でも、半導体人材戦略小委員会の主催の講演会で、東京大学教授の浅田邦博先生をお招きし、「技術者の人材育成について」という講演をしていただきました。(講演資料pdf)当日は、JEITAの関係者約40名が集まり、熱心に聴講しました。
浅田邦博先生は、東京大学の大規模集積システム設計教育研究センターにおいて多数の半導体技術者を育成された御経験をもとに、大学教育の現状と課題ならびに対策など技術者の人材育成についての講演をしてくださいました。はじめに技術の変遷から紐解き、技術の成熟は次の技術を生み出し、電気通信技術が進歩してきたこと、人間の価値観の根元は脳にあり、科学の探究は新しい脳の領域で行われることなど興味深い話題から始められました。
エレクトロニクス技術は人間の能力の補強/補完に役立ち、ロボティクスやサイバーワールドの創造など派生分野の進展にも貢献してきたが、電気系教育は教える内容が拡大し、理解の限界に近づいているという課題について述べられました。さらに、電気系は老舗思想(電気は永久に不滅)、網羅主義(強電からICTまで)により、学科数が拡大するとともに講義内容が希釈化している、産業界の要請により学生定員を増加してきたが限界であると警鐘を鳴らされました。
そのような中、明るい話題としては、浅田先生は1996年に大規模集積システム設計教育研究センター(VDEC : VLSI Design and Education Center)を立ち上げられ、多数の半導体技術者を育成され、大学からの学会発表論文数が増加したことです。VDECでの経験から、学生は先端CADを短時間で習得して、LSI設計に夢中になると話されました。
また、東京大学における電気系の人気回復への取り組みとして、教育体系の整備、研究体制の整備、学生への情報発信、分野の選択と集中など様々な対策を紹介いただきました。
最後に、産学連携の重要性を強調され、学生に産業界の情報を伝達し、人事交流により電気系分野を拡大発展し、シリコンサイクルの勝者へ期待すると結ばれました。
会場からは多数の質疑が寄せられ、浅田先生も熱心に応答され、豊富な経験と見識から大変貴重で有意義なアドバイスを多々ご教示いただき、活況のうちに終えることが出来ました。人材育成は半導体業界において重要な課題であり、今後も引き続いて半導体人材戦略小委員会で取り組んで参りたいと存じます。
講師のご紹介
東京大学 大規模集積システム設計教育研究センター
浅田邦博教授
講演資料 講演資料pdf
VLSI Design and Education Center (VDEC)
http://www.vdec.u-tokyo.ac.jp/welcome.html