太陽電池(PV:Photovoltaic)は、太陽の光エネルギーを吸収して直接電気に変えるエネルギー変換器*10。光が当たると、 日射強度に比例して発電する。「電池」という名前がついているが、電気をためる機能はない。
現在最も多く使われている太陽電池は、シリコン系太陽電池である。電気的な性質の異なる2種類(p型、n型)の半導体を重ね合わせた構造をしている。 ここに太陽光が当たると、電子と正孔が発生し、正孔はp型半導体へ、電子はn型半導体側へ引き寄せられる*11。 このため、表面と裏面につけた電極に電球やモータのような負荷をつなぐと電流が流れ出す(図1-7-4)。
太陽電池には、使われる素材や構造によっていろいろな種類がある(表1-7-1)
この太陽電池を用いて、太陽の光エネルギーを直接電気に変換する発電方式を「太陽光発電システム」(PVPS:Photovoltaic Power System)という。
地球上に到達する太陽光のエネルギー量は1m2当たり約1kW。もしも地球全体に降り注ぐ太陽エネルギーを100%変換できるとしたら、 世界の年間消費エネルギーを、わずか1 時間でまかなうことができるほど巨大なエネルギーであり、しかも、枯渇する心配がない。
現在、日本は、石油や石炭などのエネルギー資源のほとんどを諸外国からの輸入に頼っている。 こうした化石燃料は使い続ければいずれなくなってしまう。太陽の光という無尽蔵のエネルギーを活用する太陽光発電は、 年々深刻化するエネルギー資源問題の有力な解決策の一つである。
また、クリーンであることも大きな特長である。地球温暖化の原因とされている二酸化炭素(CO2)も発電時にはまったく排出しない。 エネルギー源の確保が簡単で、地球にもやさしい太陽光発電。日本は、世界でもトップクラスの太陽光発電技術をもっている。
住宅用の太陽光発電システムは、太陽の光エネルギーを受けて太陽電池が発電した直流電力を、 パワーコンディショナによって電力会社と同じ交流電力に変換し、家庭内のさまざまな家電製品に電気を供給する。
一般家庭の系統連系方式*12の太陽光発電システムは、電力会社の配電線とつながっている。 発電電力が消費電力を上回った場合は、電力会社へ逆に送電(逆潮流)して電気を買い取ってもらうことができる。 反対に曇りや雨の日など発電した電力では足りない時や夜間などは、従来通り電力会社の電気を使う。
こうした電気のやりとりは自動的に行われるので、日常の操作はいっさい不要である。
太陽光発電累積導入量の推移を図1-7-5に示す。
日本は、これまで導入量世界一を維持してきた。しかし、 2005年にFIT制度(Feed-in tariff:逆潮流電力の優遇固定買取り制度)を積極的に採用したドイツに抜かれ、 2007年の段階では第2 位の1919MWとなっている。
日本では今後の対策として、「太陽光発電導入量を2005年比で2020年までに10倍、 2030年までに40倍に引き上げる」との政府ビジョンが提案されている(2008年7月時点)。
これに対して、日本の太陽電池セルの生産量は1999年に世界第1位となり、それ以降、世界トップを維持している。 2007年の世界生産量4118MWのうち22.4%を占めている(図1-7-6)。
*10
本文は太陽光発電協会の資料を基に作成している。
*11
pn接合領域でキャリアの再結合によって光が放出されるエレクトロルミネセンスの逆。
pn接合領域に禁制帯幅よりも大きなエネルギーの光子が入射すると、価電子帯から電子が励起されて伝導電子となる。
この電子は、電場に引かれてドリフト電流を増やす。これを光起電力効果(光電効果)という。
これを利用したのがフォトダイオードやフォトトランジスタ、太陽電池である。
*12
系統連系方式:電力会社と電気のやりとりをする方式。発電された電力を、商用電力と同じ電圧・周波数に変換し、
商用電力に混ぜて使用する(連系)。一般家庭では、低圧配電線(単相2線式100Vと単相3線式100V/200V、3相3線式200V、
および3相4線式100/200V)である。