モバイル機器の高性能化に貢献する次世代CMOS

超低消費電力化技術によるFD-SOI/SOSの開発

図1 Bulk-CMOSとSOI-CMOS,SOS-CMOSの比較
図1 Bulk-CMOSとSOI-CMOS,SOS-CMOSの比較

本格的なユビキタス時代を迎え、携帯電話、PDA、時計やPC等のバッテリー駆動型の携帯機器が増加しています。 これらのユビキタス時代の主役達に共通する課題の一つが、バッテリー寿命であり、システムの高速化・多機能化に伴い、消費電力はますます増大する一方、使用できる時間は非常に短くなっています。 基本的には、各部品の消費電力を下げて、システム全体の消費電力を下げる方策が最も効果的です。 しかし、低消費電力と高速動作を両立できるLSIは、トランジスタ特性におけるリーク電流と駆動電流のトレード・オフ関係から、容易に実現することが困難でした。

そこで、完全空乏型SOI(Fully-Depleted Silicon On Insulator)の特性に注目し、超低消費電力で動作するLSIの開発を推進しています。 SOIには部分空乏型と完全空乏型の二種類の構造がありますが、特に完全空乏型は、接合容量が極めて小さい、ラッチアップが発生しない、部分空乏型に比べて基板浮遊効果が少ない、サブスレショルド特性が良好というメリットを有しています。 一方、シリコン基板内部を完全に空乏化するために,通常は50nm以下という極めて薄いシリコン層を使う必要があり、非常に難しい加工技術や回路構成技術の工夫が必要でした。 本技術により、世界で初めてFD-SOIにより商用量産化を実現し、システムの消費電力低減に成功し、電波ソーラーウオッチ等への搭載が可能となりました。

図2 電波ソーラーウオッチ向け完全空乏型SOIによるシステムLSI
図2 電波ソーラーウオッチ向け完全空乏型SOIによるシステムLSI(左:カシオ計算機株式会社提供写真)

又、完全空乏型SOIよりも更に接合容量が小さく、高周波性能、低消費電力特性に優れたSOS(Silicon On Sapphire)も開発を進めております。

図3 SOS MOSFETデバイス 断面TEM写真
図3 SOS MOSFETデバイス 断面TEM写真

本技術は、従来製品のバルクSiやBi-CMOSデバイスよりも高い高周波特性を持つインダクタなどの受動素子を提供し、それらを取り込んだアプリケーションの実現に貢献することが期待されます。

(OKIセミコンダクタ株式会社)

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